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コート♪♪

自分のコートをハンガーにかけて思いました。なぜ、コートという衣類はこんなにも偉そうなのか? 衣類がここまで偉そうな態度を取ることがあるか?
正面から見たときの話である。ものすごく偉そうに感じます。両腕の張りかたが尋常じゃないです。直立不動で非常に堂々としています。あきらかに何かを成し遂げています。
それは、ハンガーにかけられたことの誇りなのか? すなわち、他の衣服はたいてい畳まれているが、自分は畳まれることなく、ハンガーという特権的地位にある、その誇りがコートの態度を偉そうにするのでしょうか?
この視点をいちど獲得してしまうと、服屋に行くことも大変です。あちこちに偉そうな衣類が飾られています。ハンガーにかけられたジャケットというのも、なかなかに偉そうです。ものすごく胸を張っています。形状記憶ということなんだろうが、そもそも、形状を記憶してやろうという魂胆が偉そうです。よっぽど形状に自信があるんでしょうね。
その点、ネルシャツなんかは、クタッとしていて、かわいらしい。Tシャツとなれば、もはや偉そうでもなんでもなく、ただのペラペラの布です。とっても気さく。
昔、一人暮らしの部屋に女性が来た時のことです。まだ微妙な関係でお互いに意識はしているけど、完全に打ち解けているわけでもない。会話は瞬間的に盛り上がり、ふと途切れて沈黙が支配する。
そんな状況で、壁にかけられた彼女のコートだけが堂々としていました。ぎこちなく笑う彼女の向こうに、堂々と胸をはる彼女のコートが見える。私は緊張しつつ、たまにその偉そうなコートを見ていました。なんであんなに偉そうなんだろう。ハンガーにかけられた野獣の証。「あまたのオスを喰い尽くし、いまだ欲望は満たされぬ」みたいな雰囲気。しかし彼女は照れていた。どっちが本当なのかと。
2021/01/21 14:05
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