エミネム♪♪
中学生の時に女性と2人で初めての “デート”に行った時の事です。
唐突に聞かれたのです。「どんな音楽が好きなの?」
この急な質問に、なぜか分からないけどもヒヤっとしたのを覚えています。相手の方が恋愛経験が豊富だろうという客観的な現状認識から来る、「試されている」感です。
..どんな音楽が好きか?
試されていると思うと、返答に詰まりまあいた。その頃好きだったのは、B'zとミスチルとポルノ。J-POPです。しかし、直感が囁いていました。J-POPじゃない。J-POPを聴く男じゃダメだ。それじゃモテない、と。 そして次の瞬間、自分の口から、想像もつかない単語が飛び出しました。
「エミネム。」
僕はその時の空気を今でも明確に思出すことが出来ます。エミネム。一度も曲を聴いたことのない、謎の外国人アーティストの名前が突然頭に出現し、そして気がつけばその名前を、そのまま告げていました。
「すご〜い」女性はそう言って驚いていたようだが、何を隠そう、一番驚いていたのは自分自身です。何かよくわからない危険な方向に、話が進み始めていました。エミネム is 誰?分からない。分からないけどこの暗闇を、薄暗い世界を、己を信じて突き進むしかない状態でした。
“エミネムを聴く” ということ自体は恐らく疑われていなかったのだけど、その女性が次に放った「エミネムのどんな曲が好きなの?」という無垢な質問に追い詰められていきました。どんな曲?どんなというか、一曲も知らない。テキトウに言う曲名すら知らない事実に震え、身体中から変な汗が噴き出していました。どんな曲?どんな曲なんだい?エミネムさん。ヤバいぞ、終わった。覚悟したその時、もはや自分の意思なのか神の意思なのか、何か得体の知れない大いなる力に導かれ、自分の口から恐ろしいセンテンスが飛び出しました。
「メジャーなのからマイナーなのまで、幅広く聴いてるよ。インディーズの頃の曲も、けっこう好きなんだよね。」
インディーズの頃も、けっこう好き。いや、凄くないですか?冷静に。一番有名な曲すら分からない状態でよく言えたものです。“インディーズの頃の曲” とかそういうのが存在してるのかすら知らないのです。というか、エミネムに関しては、「恐らく外国人」という情報しかないです。しかし、ここまで来たからには、絶対に引き下がることは出来ないのです。エミネムについては知り尽くしている。この圧倒的スタンスを崩すことなく、ゴリ押しまくる。それしかないと思いました。
「初期の、荒削りの頃のエミネムが好きだった。」
「あいつはアメリカの音楽シーンを変える存在だ。」
エミネムを、突然の「あいつ」呼ばわり。エミネムへの前触れ無き急接近。エミネムについて言及しないといけない現実と、エミネムについては何も知らないという現実。 相反するその二つの現実が交錯し、危険な化学反応を起こし、とめどなくカオスを生み出していきます。
幸い、女性はエミネムについては余り詳しくないようでした。不幸中の幸いだ。どうにかなるかもしれない。その希望に後押しされ、エミネム論が止まらなかったです。
「まあエミネムって音楽家として見られてるけど、」
「実際のところ、エミネムはもはやアーティストじゃなくて、革命家なんだよね。」
途中から、もはや自分が何について言及しているのか、自分が何を言っているのか、自分自身でも全く理解が出来ない状況が続きました。モテたい。スゴイと思われたい。スゴいと思われてモテたい。その強い思いが、信じられない強烈な世界観を生み出した。そしてエミネムは、革命家となったのです。その後も、エミネムについてそれっぽいことを言い続けました。
「政治に影響を与えた」
「垣根を越えた」
「時代を作った」
..これ以上エミネムを野放しにすると、空前絶後の大災害になる。そう確信しエミネムが歴史を覆したあたりで強引に話題を変えて、エミネムトークを終了させました。
女性からは「楽しかった」と形式的な連絡がきたが、次第に連絡が途絶えていき、ついには返信がかえってこなくなりました。
その後、ほどなくしてエミネムのCDを借りました。
2021/03/01 20:34唐突に聞かれたのです。「どんな音楽が好きなの?」
この急な質問に、なぜか分からないけどもヒヤっとしたのを覚えています。相手の方が恋愛経験が豊富だろうという客観的な現状認識から来る、「試されている」感です。
..どんな音楽が好きか?
試されていると思うと、返答に詰まりまあいた。その頃好きだったのは、B'zとミスチルとポルノ。J-POPです。しかし、直感が囁いていました。J-POPじゃない。J-POPを聴く男じゃダメだ。それじゃモテない、と。 そして次の瞬間、自分の口から、想像もつかない単語が飛び出しました。
「エミネム。」
僕はその時の空気を今でも明確に思出すことが出来ます。エミネム。一度も曲を聴いたことのない、謎の外国人アーティストの名前が突然頭に出現し、そして気がつけばその名前を、そのまま告げていました。
「すご〜い」女性はそう言って驚いていたようだが、何を隠そう、一番驚いていたのは自分自身です。何かよくわからない危険な方向に、話が進み始めていました。エミネム is 誰?分からない。分からないけどこの暗闇を、薄暗い世界を、己を信じて突き進むしかない状態でした。
“エミネムを聴く” ということ自体は恐らく疑われていなかったのだけど、その女性が次に放った「エミネムのどんな曲が好きなの?」という無垢な質問に追い詰められていきました。どんな曲?どんなというか、一曲も知らない。テキトウに言う曲名すら知らない事実に震え、身体中から変な汗が噴き出していました。どんな曲?どんな曲なんだい?エミネムさん。ヤバいぞ、終わった。覚悟したその時、もはや自分の意思なのか神の意思なのか、何か得体の知れない大いなる力に導かれ、自分の口から恐ろしいセンテンスが飛び出しました。
「メジャーなのからマイナーなのまで、幅広く聴いてるよ。インディーズの頃の曲も、けっこう好きなんだよね。」
インディーズの頃も、けっこう好き。いや、凄くないですか?冷静に。一番有名な曲すら分からない状態でよく言えたものです。“インディーズの頃の曲” とかそういうのが存在してるのかすら知らないのです。というか、エミネムに関しては、「恐らく外国人」という情報しかないです。しかし、ここまで来たからには、絶対に引き下がることは出来ないのです。エミネムについては知り尽くしている。この圧倒的スタンスを崩すことなく、ゴリ押しまくる。それしかないと思いました。
「初期の、荒削りの頃のエミネムが好きだった。」
「あいつはアメリカの音楽シーンを変える存在だ。」
エミネムを、突然の「あいつ」呼ばわり。エミネムへの前触れ無き急接近。エミネムについて言及しないといけない現実と、エミネムについては何も知らないという現実。 相反するその二つの現実が交錯し、危険な化学反応を起こし、とめどなくカオスを生み出していきます。
幸い、女性はエミネムについては余り詳しくないようでした。不幸中の幸いだ。どうにかなるかもしれない。その希望に後押しされ、エミネム論が止まらなかったです。
「まあエミネムって音楽家として見られてるけど、」
「実際のところ、エミネムはもはやアーティストじゃなくて、革命家なんだよね。」
途中から、もはや自分が何について言及しているのか、自分が何を言っているのか、自分自身でも全く理解が出来ない状況が続きました。モテたい。スゴイと思われたい。スゴいと思われてモテたい。その強い思いが、信じられない強烈な世界観を生み出した。そしてエミネムは、革命家となったのです。その後も、エミネムについてそれっぽいことを言い続けました。
「政治に影響を与えた」
「垣根を越えた」
「時代を作った」
..これ以上エミネムを野放しにすると、空前絶後の大災害になる。そう確信しエミネムが歴史を覆したあたりで強引に話題を変えて、エミネムトークを終了させました。
女性からは「楽しかった」と形式的な連絡がきたが、次第に連絡が途絶えていき、ついには返信がかえってこなくなりました。
その後、ほどなくしてエミネムのCDを借りました。
コメント:0件