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店長ブログ | 逆ナン♪♪

逆ナン♪♪

2021/01/08 12:53

自慢じゃないのですが、人生で一回だけ逆ナンされたことがあります。私が21歳の時です。 
「何やってるの?ヒマだったら一緒に遊ばない?」
て。急に。にょきって。最初はね、何が起こったのかなーと思いました。まぁ正直なとこ、ビビりました。
私「いや、とくに何も。ヒマですけど…」
彼女「マジで?じゃあ遊びに行こうよー」
まぁ当然警戒もしました。行き着く先は、宗教の勧誘か、画の売買か。その2択かな、と。
君の名前はなんていうの?と言ったら
「ナタリー!」
僕「ナ?え?」
ナタリー「ナタリー!」
 へー、素敵な名前だね。で、国籍は?
ナタリー「インドだよー!」
ホントね、自慢じゃないんだけ一回だけ逆ナンされたことがあって。まぁそれがインド人だったわけです。 
僕「日本語すごい上手だねー」
ナタリー「そう?ありがとうー。まぁずっと日本にいるからねー」
僕「あ、そうなんだ?」
ナタリー「そう。だから、子どもの頃はずっと自分のこと日本人だと思ってたんだけどー。実はインド人だったの(笑)」
まぁ正直迷いました。笑うか否か。
ナタリー「それ知ったとき結構ショックでさー。すごい悩んで、友達に相談したのね。『あたし、もしかしたらインド人なのかも』って」
僕「うん」
ナタリー「そしたらさー、『いや、あんたどう見てもインド人じゃん!まさか知らなかったの!?』って(笑)」
俺がその友達でも、多分まったく同じこと言います。
でも、ナタリー。お世辞ぬきで綺麗な子で。明るくって。卑屈な感じも全然しなかったです。 
僕「えーナタリーはさ、その、ナンパっていうか。さっきみたいに男の人によく声かけたりするの?」
ナタリー「えーしないヨー!ナンパ今日が初めてだよー」
僕「あ、そうなんだ!」
ナタリー「ナンはよく焼くけどネ!」
僕「で、どうしよっか?お茶でもする?」
 ナタリー「んーそれもいいけど、お腹すいてない?」
僕「あー空いてるっちゃ空いてるかも」
ナタリー「アタシお腹ペコペコなんだよねー。まずご飯食べに行かない?」
僕「何食べたい?」
ナタリー「んーどうしよっかなー」
僕「じゃあ適当に歩いてみる?」
ナタリー「あ、あそこは?」
僕「…コ、コココ、ココイチ…?」
軽く目眩した。
ナタリー「カレーにしよっか?」
僕「え、あ、うん、でも、あの」
ナタリー「行こ!☆」
僕「…うん」
 一生忘れないです。店に入ったときの、店内に駆け巡った緊張感。店員さん、やめてー。その「え、お前、何本場の人つれてきてんの?それ、暗黙のやつじゃないの?」って目。 
ナタリー「あたしココイチ大好きー」
僕「ぇ!あ、そうなんだ!」
ナタリー「うん、友達とよく行くよー」
僕「そっかそっか! じゃあよかった!ホントに!」
あ!あぁ!よかった!食べたことあるんだ!でもそれを知らない店員さんはね、多分水持つ手、じゃっかん震えてた。スプーンとか、いつもよりワンテンポ遅めに来た。「俺達は、今、試されている…!」、そんな形相。もちろんナタリーは何も悪くない。店員さんも何も悪くない。俺が全部悪いです。
で、お腹いっぱいになって。じゃあいざどうしよかってなって。次どこ行きたいか聞いたら、
ナタリー「カラオケ行きたい!カラオケ大好き!」
いざカラオケ入ったわけなんだけど。ナタリー、キャッキャッしちゃってて。それはまぁ、正直微笑ましいなと。で、インドの女の子って何歌うと思います? 
やっぱりインドの曲?それとも流行りのJpop?んーん、違いました。
ナタリー「あいたーくーてー、あえなーくーてー、何度も受話器を置いたー♪」
まさかの。まさかの、松たか子『コイシイヒト』でした。しかもこれが超ウマいのです。
ナタリー「えいえーんにー、えいえーんにー、このむーねーのなーかー♪…え!?どうしたの!?」
気がついたら、泣いてました。何も知らない人がこの光景みたら、「あれ?説法身に沁みちゃってる系?」って感じだったと思います。
ナタリー「大丈夫!?」
僕「いや、ごめんごめん。気にしないで」
ナタリー「いやいや、それは気になるでしょ!」
僕「…いや、実はさ…」
話しました。失恋話。当時は友達とかにも話せなかったんだけど、逆に全然知らない間柄だったからこそ、あんなにも話せたのだと思いますナタリーも「うん、うん」って聞いてくれて。それでもって、閃いたような顔して、言うわけです。
ナタリー「わかった!そういうときはヨガがいいよ!」
ナタリー「ヨガやるとねー、結構いろいろスッキリするよ」
なんか、いつもお母さん(インド人)にヨガ教えてもらって、お父さん(インド人)も交えて一緒にやってるそうです。
僕「ヨ、ヨガってどうやるの?」
ナタリー「お?やる気になった?」
僕「うん、俺、やってみるよ!」
ナタリー「ヨシ!じゃあバッタのポーズ!まずうつ伏せに寝てー!」
僕「こう!?」
ナタリー「アゴは床につける!」
僕「はい!それから!?」
ナタリー「足!上げる!」
僕「はい!」
ナタリー「もっと!もっとイケる!」
僕「んんんんん!」
店員さん「(コンコン)失礼しまーす!こちらメロンソ…ダ…」
バッタ「あ、そこ置いといてください…」
もう、完全に虫。ナタリー、涙流して笑ってました。
で、なんだかんだで夜も更けて。バイバイの段階になって、ホントに楽しかったです。ナタリーも楽しそうにしてくれてたし。
そして「ごめん、あたし今ちょっと携帯持ってなくてさ。あ、じゃあ君の携帯貸して?『ナタリー』で番号入れとくね」、最後にそう言ってくれて。
初めて電話した夏の夜のこと、今でも忘れません。あの日、入れてくれた電話番号。何度も携帯を開いては、何度も携帯を閉じました。でも、決心して君の名前にカーソルを合わせて、ゆっくりとボタンを押しました。
 
(プルルルルプルルルル)
インダス川「ナマステー!アップコンボルラへホー!?」
僕「すいません、間違えました」
ナタリー、携帯、本当に持ってなかったみたいです。日本語って難しいです。
そんなわけでさ、ナタリーが今何してるかとかは、ちょっとわからないです。
でも、時々ふと思い出します。ナタリーが話しかけて来てくれたこと。二人でカラオケでヨガやったこと。今は良い思い出です。
 

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