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店長ブログ | コンビニの思い出♪♪

コンビニの思い出♪♪

2021/01/09 21:30

初めて一人暮らしをした時の事です。
家から徒歩10秒という抜群の場所に、とあるコンビニがありました。
そのコンビニに、新しい女の子のバイトが入ったのは、一人暮らしを初めて、3ヶ月頃のことだったと思います。いつものように自動ドアが開くと、そこには見かけない姿が。あれ?新人さんかな?
何だかんだ、7度見ぐらいしたよね。雑誌売り場過ぎて(1度見)、飲み物選んだあとに(2度見)、パンとかも拝みつつ(3度見)、いよいよレジで (4度見)、なぜか身に覚えのない麸菓子がカゴの中に入ってて(5度見)、去り際(6、7度見)。みたいな。
すごく可愛い女子高生。上はコンビニの制服で、下は学校の制服(スカート)。
女子高生「こちら7円のお返しになります」(ソッと手を添えて)
おつりを渡すときに、僕の手の下に、自分の手を添えてくれるんです。手と手が、触れ合うのです。スッて手出したら、ソッて包み込んでくれる。これが、良くて。
今でこそ、年もとりました。「ちょっとそれちょうだい?」って言われて、まぁ間接キスのような感じになったとしても、地蔵の如く不動。女の子にも慣れました。
でもその頃、キュン。イチコロニコロもチョロいもん。 
いや本当に、気持ち悪いって思われても仕方がないかとは思うんですけど。ピッタリ小銭持ってても、わざとお釣りが出るように千円札で払ったりだとか。それでいて、カッコいいとこ見せたくて、お釣り全部、レジ横の募金箱に入れたりだとか。アフリカに井戸掘りすぎて、家の水道代払えなくなったことも、正直あります。
そんなある日の事。いつものようにそのコンビニで買い物をして、レシートを見てみたら、100円お釣りを多くもらい過ぎていたわけです。
この100円を持ってる限り、レジが合うことはないわけで。それは即ち、彼女の落ち度となるわけで。
女子高生「い、いらっしゃいませ…」
ハァハァと息を切らし、店に駆け込んできた僕を見て、彼女は驚いた顔をしていました。
私「あ、あの…!」
女子高生「は、はい?」
私「さっき、お釣りを多く貰い過ぎたみたいなんですけど…」
女子高生「え?あ、 わざわざすいません!」
私「何か100円多く貰ってて、返そうと思って」
女子高生「ありがとうございます!」
私「いえ…当然のことをしたまでです」
女子高生「あれ、でも120円ありますよ?」
この期に及んでまで、手を添えて欲しかったのです。 
その一件以来、その子との距離が縮まったのも事実だったんです。それまでは業務的な会話ばかりがったのが一点、ちょっとした世間話をするようになったのです。
女子高生「今日も暑いですね」
もちろん、まだこれぐらい。でも、嬉しかったです。「えぇ。しかし、今日は月が綺麗ですよ」。言わない言えないとんでもない。実際は、口の端に泡つけて「ヴンっ」って頷くのが精一杯でした。それでも、幸せだったから。
 すべてはおよそ20年以上前の話で今、彼女は36とかって歳になっているのでしょう。
 ある日、コンビニに向かったら。大家さんに遭遇しました。
大家さん「あらー!何やってるの!?これからお買い物!?」
大家さん「私もなのよ!何買うの?野菜?じゃあ一緒に行きましょ!」
ここでだけは会いたくなかったなと。
いや、ホント悪い人ではないし、いくつになっても元気いっぱいなのは素晴らしいことだと思います。ただ尋常じゃなく声がでかいのと、何て言うか、あまり遠慮のない人で。
女子高生「いらっしゃいませー」
大家さん「そうそう、あなたこの前廊下にオレンジ色のゲロ吐いたでしょ!」
一言で言うと、黙ってろと。ホラ見てっから。あの子、俄然こっち見てっから。っていうかそれ俺じゃねーから!
大家さん「あ、そういえばさ、この前2階の廊下の網戸直してもらったじゃない?今度は違うとこが調子悪くてさ。今夜あたり、直してもらえないかしら?(ヒッソリ)」
 そんでもって、なんでおいしいとこだけ小声なんだよ。それはむしろ聞かれたいやつなんですけど。
私「あ、はい。別にいいですけど」
大家さん「ホント?助かるわー。いつもありがとねー!」
私「いえいえ…」
っていうかなんで後ろついてくるの?ドラクエ?
大家さん「あらちょっと!指から血が出てるわよ!」
気がつかなかったんですけど確かに人差し指からはうっすらと血が出ていました。
私「え?あー、まぁどっかで切ったんですかね。まぁ、傷も浅そうだし、すぐ止まるんじゃないですかね」
大家さん「大変大変!バンドエイド買わなきゃ!」
大家さん「あ、あったわ!はいこれ!これで安心ね!」
私「あ、ありがとうございます…」
 いや、どう見ても箱、カラフル。どう見ても避妊具。バンドエイド、その横にあるやつだから。
大家さん「あとは何買うの?」
私「え?あ、こんなもんですかね」
大家さん「あらそう。じゃあ、はい(手を差し出して)」
私「え?何ですか?」
大家さん「一緒に払ってあげる」
私「いやいや、そういうわけには…」
大家さん「いいからいいから。網戸のお礼もあるし」
悪い人じゃないんです。いつもいつも、何かと気にしてくれて。まるで母親のように接してくれて。
大家さん「あらやだ!こんなの買って!」
いや、それさっきあんたが渡したオカモトだから!!
大家さん「若いっていいわねー。ふふ。じゃあお会計してくるわ!」
こ、このババァを隠したい。奥の奥に。一緒に払ってくれたのはありがたいけど、それ以上に失ったものが多過ぎました。
 大家さん「はい、これ。」
私「あ、ありがとうございます」
あぁ、これでやっと解放される。と、思ったら出口付近でクルッとターン。
大家さん「じゃあ、(網戸の修理)また今夜ねー☆」
やっと行ったわ。長かったけど、これであの子とまた触れ合えるチャンス。「あれ、うちのアパートの大家さんなんですよ(笑)」、僕は最初に発するべく言葉を、頭の中で繰り返します。大丈夫、この話はきっとウケる。
女子高生「…」
あれ、なんかすごい顔してない?
僕「…ど、どうも」
女子校生「…(ペコリ)」
え、引いてない?それもドンじゃない?
な、なんで…?確かに、大家さんの声は大きかった。多少の迷惑はかけたかもしれません。でも、だからといって、そこまで嫌悪感を丸出しにするようなことは…。えー俺、ほかに何かいけないことしたかな。別に思い返しても、これといって何もなかったような…。
 えっと、まず大家と一緒に来店してー。それで、大家が避妊具を購入してー。最後に大家が「じゃあまた今夜ね」て言ってー…。
 …ぅぉぉおおおおやああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!!!!
いやいやいやいや!嘘でしょ?そんなことって、ねぇ?そ、そうだ!まず誤解とかなきゃ!ヤバい!落ち着け!
私「ピザマンください」
女子校生「ありません」
えぇ。それ以来、二度とそのコンビニには行けませんでした。
今、彼女36とかって歳になっているのでしょう。もし、もしあの日の出来事さえなければ、今頃はちょっと歳の離れたお友達として、お酒を酌み交わしたりも…そう、そんな在りもしない空想を思い描くばかりです。
 それからというもの、家から少し離れたコンビニに通うようになりました。
私「あ、袋いりません」
中南米男性「フクロ?イラナイ?」
なぜか袋を剥かれたアイスを片手に、また彼女を思い出すのです。

 

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