店長ブログ

現代はスピードが命と言ってもいい時代です。デジタル通信速度はもちろん、配送物も当日配達、翌日配達など、あっという間に消費者の元に届きます。
 しかし100年前のニューヨークだって負けていません。全長43キロにも及ぶエアシューター(気送管)網が、50年以上に渡って市の3分の1以上の郵便物を配達していました。地下を通っているこのエアシューターが、手紙や商品を目的地に送り、ものの数分で届くことが多かったといいます。まさにハイテクレトロ。19世紀の実質的なインターネットといえます。
 しかし、そのスピードとは裏腹に、このエアシューター郵便システムは維持費がかなりかかりました。1918年、連邦政府は1マイルあたり1万7000ドルの年間レンタル料金を支払わなくてはならなかったのです。そして、ニューヨークの人口が増えるにつれ、郵便物の増加に対応するのが苦しくなりました。政府は、民間企業に金を払って地下のチューブをさらに増設しなくてはならなくなったのです。既存のガス管や下水道があるために、範囲が限定されてしまっていたのです。さらに、しょっちゅう故障し、詰まった郵便物を回収するために、通りを掘らなくてはならないことも多かったのです。また、チューブの大きさから、送ることができる郵便物の種類は限られ、水や油で汚れたり破損したりするといった苦情も頻発しました。そして、このシステムが終焉に向かい始めたのは、1950年4月。橋梁の修復工事のため、ブルックリンのラインが切断されたのです。1953年には、就任したばかりのドワイト・D・アイゼンハワー大統領が、アーサー・サマーフィールドを郵便局長に任命しました。サマーフィールドは、このエアシューターシステムをすべて中止し、より経済的な自動車による配達システムに切り替えた。ニューヨーク公共図書館へ行くことがあれば、エアシューターの名残を見ることができるそうです。