「ねえ、呪いのビデオって知ってる？」
「え？呪いのビデオ？」
「そう、見ると７日以内に死んじゃうっていうビデオ」
「え！こわーい！」
「こわーい！」
「・・・で・・でも、ビデオかー・・・。
　うちDVDしか見れないからなー」
「あー、やっぱ？うちのもHDDなんだよねー」
「ビデオなんて、今、見れるとこあるのかねー」
「ねー」


DEAR　貞子へ
ハロー。
元気してますか？
もう20年近く前になりますね？
誰も知らないような田舎町の井戸から
ビデオ一つ持って出てきたあなたが、
「呪いの連鎖は続くよ」なんて決め顔で、
ブラウン管を駆け抜けてったあの日。
今でも、昨日のように思い出します。
不幸の手紙くらいしか知らなかった私達にとって、
貞子は憧れの存在。
ビデオなんていう大人でハイテクなツールを使いこなして、
会う人会う人に呪いを振りまいていった。
貞子。
私だって信じられないですよ。
まさかお茶の間からあの「ビデオ」がなくなる日が来るなんて。
もう10年くらい前ですね。
貞子をテレビで見かけなくなって。
何なら井戸とビデオ持って営業に回るくらい仕事がなくなってるって噂を聞きました。
私はあなたがいつか「あの人は今」とかに引っ張り出されるんじゃないかって、
ずっとヒヤヒヤしてました。
カーテンの向こうから、ご本人登場！なんて、
あなたがハニカミながら、井戸から出てきたら、どうしようかと思ってました。
巷では「あー貞子？そういえばいたよね」みたいな雰囲気。
「前に、よくテレビ出てたよね。というよりテレビから出てたよね」って。
なんと言っても一番腹がたったのは、最近の中高生で、
ちょっと気を許すと、「あー「君に届け」の？」とか言い出して。
もう、「君に届け」とかが一番言われたくない。
貞子は、君に届くと死ぬ方のやつだから！
って注意しときました。
近年にはひどいもんで監督にも
「貞子、ちょっと脱ぐか？」って言われたとかなんとか。
貞子のブラウン管から這い出る時のまさかのポロリとか、
こっちがキャーってなります。
あと、深夜にもしかしたら放送するつってた、
全力井戸。
やっぱ、お蔵入りでしたね。


それでも貞子、この十数年、ほんとうによく頑張ったね。
今まで、いっかいの幽霊が、ここまで時代の波についてきたことなかったのではないですしょうか？
井戸を主軸として、呪い一本で日本を支えてきた。
「昨日までのビデオ？そりゃ捨てましたよ。
　次？次はもう、ブルー霊ですよ」
そう語る貞子社長の目に迷いはなかったです。
貞子の勇姿を見て、歴代の怨霊たちも、きっと勇気もらってると思います。
こないだ、落ち武者が「そろそろリーブ２１やる」って言ってたし。
お菊さん、食洗機使ってましたよ。
呪いだってもうビデオとかの時代じゃないよですよね。
でも、テレビから出るっというのは、外せないですよね。
でも、貞子、気をつけて。
私の調べでは、いまや、動画サイトは何でも見れる時代。
ちょっと気を許すとスマホとかで呪いの動画見てますから。
スマホって知ってますか？
驚くほど枠が小さいです。
貞子のつむじがいけるかどうか。
まず肩関節を外して、みたいな２８インチ用の小細工通用しないです。
でも、出ないわけにはいかないですよね。
せっかく井戸から出てきて（全力井戸）、
ここまで来て、スマホ越しにインターホンみたく語りかける貞子とか、
絶対見たくないです。
なんとしても、画面から飛び出して欲しい。
もしかして、スマホから、ちっちゃい貞子出てくる可能性ないですか？
手乗りの。
でも、気をつけて。
スマホは携帯だから、こう、手に持ってるわけで、
いつもの軽い気持ちで行くと、すぐ、まっさかさまに下に落ちちゃうわけ。
やはり小さい分は量で攻めるしかないですよね。
もう井戸からレミングスみたいに貞子出しちゃえ。
で、五人目くらいから、こうパラシュートつけたりして。
そうかと、思えば、驚きの大画面テレビで呪いの動画を見る人なんかも出てきますよね。
そこは、もう、井戸もその分でかいわけですから。
だいぶガタイのいい、仕上がった貞子が出てこれますよね。
貞子というか、もうマツコ。
マツコでいいですよね。そこは。
あっちも、多分なんらかの呪いは、
常備１個や２個は持ってるはずだから。

これからの貞子、すっごい楽しみにしてます。
もう、ホラーとか、どうでもいい。
あんたが、あの地獄の干された時代を経て、
井戸をくぐりぬけ、地デジ化された画面から飛び出してきたら、私だってスクリーンに飛び込んで、横で叫んでる石原さとみを押しのけて、
よく来たねぇぇ頑張ったねぇぇほぉらお顔をもっとよく見せて！と
夏休みに孫を迎えるおじいちゃんのように、
あなたを抱きしめるよ。
その白いワンピースどこで買ったの？パルコ？
とか言って。
そういえば、貞子って好きな子いないの？とか。
で、最終的に、貞子が呪いの片手間、
勇気を出して好きな人に告るっつー、
完全に、君に届けとの奇跡のコラボで感動のフィナーレ。
どうですか？
とにかく、貞子。応援してる。
貞子がどうやって、呪いの連鎖をビデオから移行させたのか。
ビデオ撤退を決めた時の決断。次なる戦略。
井戸からテレビまでのウォーキング2020年バージョン。
貞子がどんなサイズ感で、さまざまなインチの画面から出てくるのか。
出てきた貞子は、結果どうやって井戸まで帰るのか。
現地解散なのか。
あの幻の全力井戸は見れるのか。
これからの貞子に期待してます。

昨夜、マンションのエレベーターに乗ったら、
すごいでっかい蜂がいました。
完全に、刺されたら駄目な種類の蜂。
おしりとかが、もうプリップリで、シマシマが凄いヤツ。
あー、話し合いとか、とりあえず座って、とか、どっから来たの？みたいなトークしたかったなあー。
でも、いきなり刺してきました。
おしりを、完全に９の字に曲げて刺す気満々などころか、
もう上着、ちょっと刺されたわけですよ。
避け切ったと思ったわけですが、上着刺さってました。
でも、あっち、なんか全然怒ってるわけです。
また９の字になって、もうすげぇ刺してこようとするわけです。
蜂って、１回じゃなかったっけ？刺せるの１回までじゃなかったっけ？
って、すごく思ったのですけど、無限。ルール関係なし。
私も、振り乱して、応戦したんですけど、結果、下は互角！って思ったのか、
急に顔狙いみたいな動きになって、もう、あの個室で、
思う存分こぶしを交えたんですけど、
やっと１階について、ほんとドアが開くまでが案外長いので、
最後まで気を引き締めて、ちょっとしたブレイクダンスかなってくらい、
応戦して。ドアが開いたら、あいつ即効逃げていきました。
か・・・勝ったー！って思って、人差し指を天に立てて、ナンバーワンを讃えたかったのですけど、１階に、案外エレベーター待ちの人が多くてすごい凝視されました(笑)。
 

お、おにぎり、食べたいと思い下のコンビニ行こうとアパートのドアを開けたら、８人くらいの警察官が隣の部屋の人を包囲してまして、ドア一枚隔てて、超ドラマティックな展開になってました。
全く予期してない状況で若干、会釈しちゃったんですけど。警官に。
警官とかも、むしろ会釈返してきますから。
で、なんかコンビニで普通におにぎり買って、
もしかしたらあれは幻だったのかもしれないと思いつつ帰ってきたら、
あはは、むしろ警官の数、ちょっと増えてました。
10人以上の警官で、隣の部屋の人が、
ちょっとした卒業式の金八っぽくなってて、
まあ、さっきよりグッと包囲されてるわけですが。
なんか後ろの方の警官が、すっごい空気が読める人だったみたいで、私を見て、なんか、こう、「後ろ人通るよ！」みたいなゼスチャーをみんなに送ってくれちゃって、
もう事件の真っ只中っぽいのに、微妙に私の部屋まで体を開けてくれちゃって、
私も私で、「あ、じゃあ･･･」みたいな感じになっちゃって、
ほんと、隣の部屋の人と警官は今にも一発触発みたくなってんのに、
なんか私だけおにぎりを持って、ちょっと中腰で、
スクリーンとかの前を横切るみたいにして、
なんか警官と隣人の間を横切りました。
ほんと、軽く会釈とかしちゃったんですけど。隣人なので。
で、まあ、無事、部屋に入れたわけですが。
玄関のドアに耳を当てて、すっごい聞いてみました。
でも、思いの外 ドアが分厚くて、なんかよく聞き取れず、
事件の概要が全く掴めないわけで、
ならばと、もー超そっと郵便ポストを開けてみたら、
ずっとクリアな音声を聞くことができまして、
そこで「じゃあ、隣のやつにでも確認してみたらいいだろ！」みたいなお声をキャッチしました。
正直、戦慄が走りました。
神に誓って事件の片棒を担いだ覚えはないので
「確認」だったら任せろ！ってくらいシロなんですけど。
ものすっごい勢いで掃除しました。
そして８年くらい前に買ったスーツを着まして、
さぁ来い！つって待ち構えたわけですが、気づいた時には、すっかり廊下に誰もいなかったです(笑)。
 

昨夜、右隣の部屋の人が、確実にヤッテマス。
そして、左隣の人も、ヤッテマス。はい、確実に。
右壁と左壁に交互に耳を当ててみたわけですが、
間違いありません。両者互角です。
初めての、奇跡の同時公演。
しかもそれが、うちの部屋のベッドの枕もと一点においては、奇跡の高音質。
偶然の5.1chサラウンドシステムみたくなっちゃってる。
ここでもう、私としては鬼の鉄槌を下す時がきたと。
で、まあ、満を持して、壁を「ドン」ってやったわけです。（必殺）
つーか、両部屋なので、右をドンってやってから、急いで左もドンってやったわけで。
それから、右壁に耳を寄せて、んで急いで左壁にも耳を寄せて、
まあ、両軍懲りないことを確認しまして、
何、この二往復。
こんなに切ない二往復したことないです。
一瞬、ちょっとした行司みたくなってました。
のこったのこった言ってた。
のこってんのは、どう見ても自分なのに。
あとは、もう、ネットで見つけた、
「猪木ボンバイエ」を大音量で流してみました。
したら、まあ、両隣から、ドンってやられました。
 

家で、そうだ、ワンルームだしバルサン焚いちゃおう！
と思って、バルサン焚きました。

で、部屋出て、姉にメールしたら
姉からすぐに返信がきました。
「火災報知機ちゃんとビニールで覆った？」
時よ止まれ。
どうして、どうして、いっつも、どうして・・・！
って半泣きでドアを開けたら、もうバルサンってすごいのです。
ワンルーム相手に本気！！
トイレにかかってるタオルで、口を押さえながら、必死でつかんだサランラップ持って、
突入しました。
これ、もう「まだ中に子供が・・・！」ってレベルの
突入です。
自分の平凡な人生で、ここまで煙に巻かれた部屋に突入する場面が
巡ってくるとは思わなかったです。
そういう役割は絶対まわって来ないと思ってました。
もー！絶対！生きて！帰る！って。
THE！ LAST！ MESSAGE！ 海猿！って。
そして、火災報知機、天井についてるわけです。
近くて遠い国、天井。
そこに潜む火災報知機。
で、とりあえず、火災報知機に手が届かないので、
家にある唯一無二の椅子 まる椅子を探したんですけど、
煙で、ぜんっぜん見つからなくて、
もう私が死ぬと思って、窓を開けて煙を出し、火災報知機は！って、丁度見つけた椅子に飛び乗って、火災報知機にラップをしようと思ったら、
ラップの端がまったく見つからなかったです。
ここにきての、細かな手作業。
「あー昨日、爪切っちゃったから実力半分も出せねー」ってセリフは、
海猿状態です。
そして、サランラップで手間取ってるうちに、
バルサン普通に終わってました。